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【書評】『大きな森の小さな家』 ローラ・インガルス・ワイルダー 福音館文庫

 時代も国も遠く離れた「普通の家族の普通の幸せ」を描いた作品が、読者の心を惹きつけ続けている。今回紹介する作品は、ローラ・インガルス・ワイルダーによる自伝小説『大きな森の小さな家』。本国のアメリカに続き、日本でもテレビシリーズ化された作品だ。




 本書は全9冊の「インガルス一家の物語」シリーズの1作目で、西部開拓時代のアメリカが舞台。激動の時代を生きて、大人へと成長していくローラとその家族の生活が記録されている。ウィスコンシン州の大きな森の中で過ごした、5歳から6歳までの1年間の日々を描く。主人公のローラは、厳格ではあるが優しさに満ちた両親と聡明な姉、幼い妹と共に、大自然の中で愛情のあふれる生活を営んでいく。

 幸福な日々の生活の様子や、周りを取り囲む大自然の風景が美しい言葉で表現され、物語に彩を加えているのも本書の魅力の一つだ。作者の豊かな感性で紡がれた言葉は、読者に過去の時代の様子を鮮やかに思い起こさせる。

 さらに、本シリーズでは一人の少女の幼少時代から、未開拓地を求めてさまざまな場所へと移住し、大人へと成長して結婚、独立していく過程を描いている。この多彩なエピソードで読者は読み返す度に新たな面白さを見つけることができる。これも本書が児童書でありながら、幅広い年齢層の読者に愛され続けている理由だ。

 また本書には料理の作り方や洗濯の仕方をはじめ、毎日何をして過ごしていたのか、当時の開拓者たちの自給自足の生活の様子が詳しく記されている。現代とは全く異なる文化について知ることができ、読者の好奇心を刺激するに違いない。

 作品の中で、インガルス一家は厳しい自然に立ち向かい、互いに助け合って懸命に生きていく。その姿に、家族愛の尊さを感じずにはいられないだろう。読み終わった後には、ローラと同じように、何気ない普段の生活の小さな幸せに気付けるかもしれない。
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