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ぶらりがく「記憶のはなし」 ~記憶の仕組みを体験~

 本学理学部主催の「ぶらりがく『記憶のはなし』」が先月15日に片平キャンパス生命科学研究科で開催された。今回は、生命科学研究科の筒井健一郎教授が講師を担当。幅広い世代の市民が集まった。




 「ぶらりがく」は、理学部で行われている研究を市民に分かりやすく説明し、理解してもらうことを目的として月に一度開催されているイベントである。今回の「ぶらりがく」は記憶がテーマ。記憶とはどういうものか、そのメカニズムについて筒井教授が解説を行った。

 記憶には短期記憶と長期記憶がある。長期記憶はさらに、出来事や知識を覚える顕在記憶と、訓練して覚える潜在記憶に分けられる。潜在記憶は技能によって得られる記憶であり、そのおかげで私たちは、自転車に乗るように何気ないことを無意識に実行できる。

 潜在記憶について、筒井教授は「H.M.」という患者を紹介した。彼は新たにものを覚えることができない。しかし、鏡越しで絵を描く鏡映描写による運動の学習を繰り返すと、本人の記憶では鏡映描写をしていないが、技能面で描写がより上達した。

 講演の後半では、参加者全員が被験者となり、鏡映描写の実験を行った。実験ではまず、星のマークが間隔3ミリ程度の二重線で描かれた紙の上に、星のマークが見えないように台を置く。その台の奥に、反射で紙が見えるように鏡を置く。鏡越しに、星の二重線の隙間を鉛筆でなぞり、一周するまでの時間を計測する。最初、見える状況が鏡で反転するため、うまくなぞることができない。しかし何度か繰り返すとより正確にスピーディーになぞることができるようになった。

 鏡映描写では、一方の手で訓練するともう一方の手で容易に描写できる両側性転移という現象がある。実際にもう一方の手で描写すると、正確さはやや劣るが、描写のスピードは互角だった。筒井教授は「この現象を知るだけではなく自ら体感してほしい」と語った。

 筒井教授は最後に「記憶は継続的に努力することで得られる」と話し、講演を終えた。参加者は鏡映描写による学習を通して潜在記憶が成立する過程を実感し、記憶について理解を深めた。
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