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【研究成果】超柔軟構造の液晶デバイス開発 ~商業目的での運用へ~

 工学研究科の藤掛英夫教授らの研究チームが超柔軟構造の液晶デバイスを開発した。この開発は今年5月の国際会議で発表され、大きな注目を浴びた。今回開発されたデバイスはディスプレイの可能性を大きく広げるものであり、今後は商業目的での応用が期待される。






 研究チームが開発したデバイスは、厚さ10マイクロメートルのポリイミド透明基板を用いている。ラップのような柔軟性を持ち、従来のフレキシブル液晶デバイスで用いられるプラスチック基板の10分の1の厚さだ。ポリイミド用溶液を薄く広げて固めて作られた。

 この極薄基板は熱に強いという長所がある。そのため、電極や画素構造の作製をしやすくなっている。また光学特性を制御したことにより、高コントラスト・広視野角な表示が得られるようにした。

 この2枚の基板の間に液晶を挟み込むのだが、両基板を接着するために高分子壁スペーサを導入した。このスペーサの間隔が短くなるほど折り曲げた際にへこみにくくなる。スペーサの作製には、高分子原料を混ぜた液晶に紫外線をマスク越しに当てるという手法をとった。基板が薄くなるほど基板の間隔のずれから表示が乱れてしまうという課題があるが、このスペーサはその問題点を克服した。

 柔軟性のあるディスプレイの一つに有機ELを利用したものがある。有機ELとは、特定の有機物に電流を流すと発光する現象のことだ。従来の液晶ディスプレイに比べて構造がシンプルである。しかしプラスチック基盤が空気や水蒸気を通しやすいため、輝度の低下や焼き付きが起こって劣化が早くなるという問題もある。

 今回の成果は、有機ELの長所である柔軟さが液晶でも実現できることを示した。液晶ディスプレイの大型化技術を今回の開発に応用できれば、例えば丸めて持ち運べ劣化の心配がない大型テレビのようなものを、有機ELより早く実用化できる可能性がある。

 藤掛教授は約20年前から液晶研究に着手していた。当時はNHK放送局の研究所の所属であったが、4年前に本学に移ると、フレキシブル液晶の研究室を立ち上げ、3年前に今回の開発で用いた基板の材質に着目。その後作製を開始して、多くの企業と連携しながら、今回の開発を成し遂げた。

 夢のある技術につながるかもしれない今回のデバイス開発。藤掛教授は本学の学生に「人がやっていないことに挑戦しないといけない。夢を持ってほしい」とエールを送った。
研究成果 8123607862963650526
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